わたしがはじめてイタリアに足を踏み入れたのは1997年。ローマからバスで辿りつたのは、マルケ州のアペニン山脈のふもとの小さな中世の町、カッリ。イタリア語を全く知らなかった私を出迎えてくれたのは、暖かい人々と緑あふれるなだらかな丘の景色、素朴で古い町並み、そしてモンテフェルトロと呼ばれる画家ラファエロの故郷である世界遺産ウルビーノの美しさとそこ一帯の文化と歴史の空気でした。すっかりこの地に魅せられた私は、ライフワークである陶芸を学ぶため、イタリア、ファエンツアで2年間の学生生活を過ごし、その後またマルケへと戻ります。現代美術彫刻の作家に従事しながら作陶活動する中、マルケの色々な伝統工芸や郷土料理に触れ、楽しみである工芸作家や生産者の訪ね歩きで築いた彼らとの交流のなかで、マルケの魅力をもっと紹介したい、という気持ちがふくらみはじめました。そして、私に食文化の魅力を教えてくれた友人であり、郷土料理研究家である、フランチェスカ・グエッラさんとともに、ここマルケ州モンテフェルトロを中心とした伝統工芸や食文化を発信する体験型のオリジナルの旅を提案する、”ラファエロの丘から”を2014年に起案、発足しました。私達の活動の拠点である、ラファエロや多くの画家が愛したウルビーノやウルビーノ一帯のモンテフェルトロの丘から、大地や海に囲まれた人々の暮らしに根を下ろした文化をお伝えできれば、これ以上に嬉しいことはありません。イタリア在15年、マルケ在住12年の経験を活かして、まだまだ知られていない秘境マルケを皆さんに知っていただくお手伝いができれば幸いです。
2014年 8月 林 由紀子
主宰プロフィール 林 由紀子
北海道札幌市生まれ、陶芸作家、現地アテンド、コーディネート
札幌市立高等専門学校工芸デザインコース卒業
ファエンツァ国立陶芸美術学校彫刻家卒業
現代美術作家Bertozzi & Casoniに12年間従事
マルケ州ウルバニアAssociazione Amici della Ceramica会員